不動産コンサルタント長嶋修氏が語る「不動産投資の現況と将来」

不動産投資をめぐっては、日々ニュースなどにも取り上げられあまり良い印象を持っていない人も多い。高リスクと思われがちの投資だが、果たして本当にそうなのだろうか。

現在不動産投資が抱える問題や今後の動きなどを、不動産コンサルタントの長嶋修氏と梅村和利氏に伺った。

プロフィール

長嶋修(写真右)

株式会社さくら事務所会長。広告代理店を経て、ポラスグループ(中央住宅)に入社し、幅広い不動産売買業務全般に携わる。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立。『中立な不動産コンサルタント』としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行なう。著書・メディア出演多数。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)他、著書多数。新著に『100年マンション 資産になる住まいのそだてかた』(日本経済新聞出版社)。

梅村和利(写真左)

株式会社 theHOUSE 代表取締役。大学の経済学部を卒業後、税理士事務所やプラント関連の建設会社勤務などを経て、2004年、新栄クリエイトを創業。「本物の環境にやさしい家」を目指してブランド「the HOUSE」を立ち上げ、100棟を超える住宅の設計、建築、リノベーションを行う。また、戸建賃貸「casita」を開発し、そのコンセプトと住宅としての性能の高さが評価され、2012年より本格的に全国販売が開始される。

不動産投資の現状と将来

最近、テレビなどのマスコミで「かぼちゃの馬車事件」を目にした人も多いのではないだろうか。金融機関の話もあって「不動産投資は危ない」というイメージを持たれ、あまりよく捉えられていないのが実情だ。

しかし、基本的に不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン。つまり普通にやれば、何倍も儲かることはないけれど、大きく落ち込むこともない、安定的な投資といえる。

長嶋氏によると、「不動産市場にはもちろん上がり下がりの波はありますが、不動産価格に比べると、賃料というのは硬直性があるので景気が上下してもあまり変わりません」とのこと。基本的には安定だが、大胆に売り買いする様子がときどきニュースで大きく採り上げられたりするため、「不動産投資は危ないんじゃないか」というイメージになってしまうのではと述べている。

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不動産投資のリスクとは

どんな投資にもリスクがつきもの。不動産投資は株を買うこととは異なり、株を買っても、株主総会で少し探るくらいのことしかできない。

一方不動産投資というのは、投資をしたあとはなかば個人事業をやっているようなもの。節目節目で賃料をどう改定していくとか、築年数経ったらどんなふうにリフォーム、リノベーションしていくとか、自分たちが手を入れる、改善する余地がある。いつ、どんな場面でも改善できる。そこが不動産投資のいいところだと、長嶋氏は述べている。

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空室が増え過剰供給に

長嶋氏によると、これから15年後の2033年には空き家数が2000万戸をはるかに超え、空き家率は30%を超えるという恐ろしい予測もあるとのこと。持ち家も賃貸も、この先過剰供給の状態になり、空室が目立つことになっていく。

しかし「これから空き家が増えるから不動産投資はだめなのか、というとそんなことはないと思います」と語る。

1億2000万人いた人口が9000万人に減る、3000万人いなくなる。つまりその9000万人を対象に仕事をすればいいということ。ニーズのある立地、あるいはニーズのある規格というのは、その時々に必ずあり、そういうところは賃料が変わらないどころか、むしろ上がるかもしれないという。

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地方の戸建て賃貸が狙い目?

長嶋氏が一番大事だと思っているのが、それぞれの地域での需給のギャップ。同じ沿線であっても、ここはワンルームばかりでファミリータイプが全然ないなどと、地域間でのギャップは多いという。

地方で戸建ての賃貸を高い賃料で貸せるのは、そこに全然戸建ての賃貸がないから。

「賃貸というとアパートで、ちょっと広くていい家に住もうとなると自分で一戸建てを建てるしかない、みたいなことになっています。戸建ての賃貸でかっこいい家があると、やや家賃が高くても借りてくれたりする」と話している。

梅村氏も一戸建ての賃貸に住む方の経済属性を調査した際、半分以上が法人の借り上げだったり、社宅寮だったりしたそうだ。

地方の戸建賃貸は借りている人の経済属性が相対的に高いことが明らかである。

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金利面では不動産投資についていい環境か

かぼちゃの馬車などの問題が、マスコミを騒がせていた昨今。金利の面で言えば不動産投資についてはいい環境というのが続いていると考えることもできるが、それは不動産の買い方によるという。

現金買いの人にとっては、金利上昇局面になると不動産価格は下落の方向に働く。金利が上がって不動産価格は下がった時に現金で買えばいいわけだが、そんな人ほとんどいない。現実的には多かれ少なかれ融資を組んでやるため、なるべく早く借りたほうが終わるのも早く、低いうちにフィックスして、できれば固定金利で、ということなる。

しかし、ここで長嶋氏が警告。「実は最近、いくつかの金融機関の住宅ローンの契約書を見ると、固定金利なのに『社会情勢が変わった場合は金利が変動する場合があります』という但し書きがついている契約条文が出始めたんです」と話し、固定金利のローン契約をする際には、面倒でも一回契約条文を一通り確認しないとわからない時代になってきたと話した。

固定金利そのものが、情勢が変わっても一般的に金利が固定だから「固定金利」と思われているはずだが、個人で見極める必要があるだろう。

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不動産投資の20年後予測は可能か

今後先の20年について、長嶋氏は「不動産市場はこのままいくと大きく三極化する」と予測。どこまでいっても価値が落ちず、あるいは上がる余地すらあるような不動産が上位15%くらい。これは都心の一等立地はもちろんそうだが、郊外でも地方でも立地と規格がちゃんとしていれば、この上位15%に入れるという。残りの大半の70%くらいは、人口減少と成熟に応じてだらだら下落していくしかないそうだ。

そして問題なのは下落率。減率2%ずつなのか4%ずつなのか。下位15%は無価値か、あるいはマイナスになるとのこと。「この状況がどんどん先鋭化していくのがこれからの20年だと思われます」と話している。

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AIや自動運転がもたらす影響や変化は

一方で、AIがどのくらい進化して家庭の中に入り込んでいくのか、また自動運転については予想不能だという。自動運転が実用化されているであろう20年後には、街のあり方や住まいのあり方がどのように変化するかどうか、想像はできても予測はできないそうだ。

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梅村氏は、自動運転の実用化で移動手段が劇的に変わった場合を予想。「もしかしたら“駅近”というのが、今ほど付加価値ではなくなる時代が来るかもしれないとの見方もあります」と20年後を予測した。

これに対し長嶋も、「一定程度の駅からの距離は、立地によっては気にならない時代が来る」と一致。10年後、20年後にも若年層が定期的に流入するような、あるいは流入させようと自治体が意思決定しているようなところはあるそうで、そういうところを選ぶ、調べることができればいいのではないかと提案している。