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【インタビュー前編】モノとの付き合い方を変えると、新しい暮らしが見えてくる 佐々木典士さん(ミニマリスト)

ミニマリズムを極めた佐々木さんの家。今は京都に引っ越し、ミニマリストとしての新たなステップに進んでいる(撮影 佐々木典士)

たとえシンプルなデザインが素敵な家に住んでも、当初のスッキリとした状態をキープするのは至難の技。家を愛しているが故に、片付けに悩む人は多いのではないだろうか。

ミニマリストとして知られる佐々木典士(ささきふみお)さんは、空間をスッキリと保つには、持たないメリットを実感することが大切だという。

佐々木さんは、2015年6月に上梓した著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない –断捨離からミニマリストへ-』によってミニマリストという言葉を広めた。発売後数カ月で10万部を突破するベストセラーになった同書によって、ミニマルな暮らしに興味を持った人も多いだろう。現在の佐々木さんは京都に移住し、ミニマリストとしての生活をさらに発展させている。

そんな佐々木さんが東京を訪れたおり、ミニマリストになって見えて来た精神的な価値や、現在の京都での生活についてうかがった。

【インタビュー前編】モノとの付き合い方を変えると、新しい暮らしが見えてくる
【インタビュー後編】モバイルハウスを自作!? ミニマリストの新たな挑戦

【佐々木典士】
ささきふみお 編集者、中道ミニマリスト。1979年生まれ。香川県出身。学研『BOMB』編集部、INFASパブリケーションズ『STUDIO VOICE』編集部、ワニブックスを経て2017年よりフリーランス。著書に『ぼくたちに、もうモノは必要ない –断捨離からミニマリストへ-』ワニブックスがある。すべてを保存し、何も捨てられない元マキシマリスト。Twitter @minimalandism

溢れるモノに圧倒されていた“マキシマリスト”だった頃

(青山のCOMMUNE 2ndにて撮影)

——佐々木さんは、もともと持ち物を最大限に持とうとする “マキシマリスト”だったそうですね。その頃の暮らしはどのようなものだったのでしょうか。

佐々木典士さん(以下佐々木):マキシマリストだった当時は、モノに圧倒されていました。常に“使ってないモノ”からの大量のメッセージを受け取っている感じで「あれも使わなきゃ。これもできてない」と、焦燥感を抱えていました。一方で、それでもまだ「足りない、足りない」と感じて、次から次へと買っているうちに、自分が管理できるモノの量を超えてしまったんです。買ったモノをうまく使いこなせないのはもちろん、掃除もできていませんでした。そうなると自己肯定感も低くなります。常に心がザワザワしていたと思いますね。

最大限に“持つ”生活をしていたマキシマリスト時代の佐々木さんの部屋

——もともとは、モノへの執着があるタイプだったということでしょうか。

佐々木:今でもモノは大好きですね。

——当時は住まいに関してどんな希望を持っていらっしゃいましたか?

佐々木:多分、もっと大きくて収納スペースがある家に住めば、自分でも片づけられると思っていたのでしょう。とはいえ自分の持っているモノをきちんと収めようとしたら「この東京で、どれだけ家賃を払わなきゃいけないんだ!」と……残念な気持ちなったりもしていました。今となって思えば、大きな家に住んでもマキシマリストのままであれば、スペースがすぐにいっぱいになってしまんでしょうけど。

 今日から始められる、ミニマリストへのステップ

——そんな生活から徐々に脱却されてミニマリストになられたのは、とても大きな変化です。モノの管理に困っているような状態から、ミニマリストに転換するコツってあるのでしょうか。

佐々木:マキシマリストからミニマリストになるまでに、僕は5・6年かかっています。数年かけて徐々にモノを減らしていって、ミニマリストという存在に出会ってからの約1年で大幅に手放した感じです。手放す中でスッキリしたり、解放感があったりということを実感し、「これもいけるんだったら、これもいけるかな」みたに、段階的にモノを減らすのが上手くなっていったんです。

——モノを減らすことに、どんなメリットを実感されたんでしょう

佐々木:掃除が簡単になるといった分かりやすい利点もありますが、モノがないことのメリットの多くは、精神的な価値です。

——片付けたりモノを減らしたりしても、本当にそのメリットを実感してなければ、すぐに元に戻ってしまうものです。どうしたら、モノがないことの精神的な価値に気づけるのでしょうか。

佐々木:手っ取り早くモノがないメリットを実感するには、1カ所から攻めてみてください。たとえばデスクトップをきれいにするとか、鞄の中から始めるとか。言わば、局地戦みたいなもの。家のなかなら、玄関に入ったところの、モノを置いてあるスペースから始めるとか、キッチンから始めるとか。それで、「スッキリした暮らしってよいものだな」と感じたら、ほかの場所もミニマルにしたいと思うのではないでしょうか。

——なるほど。まずはお気に入りの場所をミニマルに整えることで、メリットを実感できそうですね。

お寺のミニマルな空間は、日本ならではの美しさだ

佐々木:家の外のミニマルな場所に出かけてみるのもよい方法です。たとえばお寺や旅館。ホテルもよいのですが、最近はインテリアが過剰なところも多いので、やはりお寺がおすすめですね。

——確かに神社仏閣では、ミニマルな空間が精神にもたらす価値を感じます。庭園の自然や、自分の内面に普段よりも集中できる気がするものです。

佐々木:世の中には素敵なモノがあふれていますが、それを持つことの価値と、持たないことの価値を比べてみると、ぼくの場合は大抵持たない価値の方が勝ります。またモノは、必ずしも自分で所有する必要がなかったりもします。本当に素敵なモノは、博物館などで鑑賞できます。所有するということは、いつもそばに置いて、きちんと手入れもしなければいけないということ。毎日管理に手間をかけてでも側に置きたいと思うアイテムって、実はめったにないと思いますよ。

ミニマリストになることは、モノと付き合いなおすための儀式だった

——モノを最小限にすると、所有に対する考えも変わりそうです。

佐々木:過去の自分もそうなのですが、世の人はモノを持ちすぎていて、自分が本当は何が好きなのか、分からなくなっているのではないでしょうか。モノを減らしていくなかで「どちらが好きなんだろう、何が好きなんだろう」と好きなモノ対決させていくと、本当に自分に必要なモノだけが残ります。すると自分の価値観もはっきりすると思うのです。

——スッキリとしたライフスタイルが確立できない原因のひとつに、好みや価値観の定まらなさがあるような気がしますね。

佐々木:僕は「ミニマリストは一回通過すればよい」と考えます。その経験によって自分の価値観がはっきりとすれば、そのあとは別にモノを増やしても構わないと思うんです。また、そもそもきちんと自分の所有物を管理できている人であれば、ミニマリストになる必要もないと思います。

——ミニマリストになることは、モノから自立するための通過儀礼ともいえそうです。

佐々木:必ずしも、ずっとやらなくてもよいのです。後でお話しますが、今は自分自身もミニマリストという枠組みからは、少し外れつつあるのかもしれませんし。


マキシマリストからミニマリストに転換していく過程で、自分に本当に必要なモノが分かり、価値観がはっきりとしてきたという佐々木典士さん。

スッキリと整ったインテリアを実現するためには、自分の価値観にそって必要なものだけを選択し、しっかりと管理することが欠かせない。しかし私たちの多くは、“素敵だから”という理由だけで自分の管理能力を超えた数のモノを所有し、空間を溢れさせてしまっている。

佐々木さんのお話しには、モノとの付き合い方を見失いがちな現代人が暮らしをアップデートするための、多くのヒントがあるのではないだろうか。

後編では、京都に移住した佐々木さんの、進化したミニマルライフについてうかがっていく。

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YADOKARIは、スモールハウス/小屋/コンテナハウス/タイニーハウス/ミニマルライフ/多拠点居住を通じ、暮らし方の選択肢を増やし、「住」の視点から新たな豊かさを定義し発信します。

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