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フランク・O・ゲーリー設計の美術館が引き起こした「ビルバオ効果」を知っていますか?

工業都市として発展し1990年代以降に産業が衰退したスペイン北部のバスク地方にある都市ビルバオ。人口35万人の一地方都市であるビルバオは、今や世界中から観光客が集まり、年間100万人以上の人が訪れ、建築やアートに少しでも興味がある人なら聞いたことがある名前だろう。

そのビルバオを世界的に有名にしたのは、ニューヨークに本拠地を置くグッゲンハイム美術館が分館「グッゲンハイム・ビルバオ」をオープンしたからだ。そして、この美術館を設計したのは、今や現代建築の巨匠とされているフランク・O・ゲーリーだ。

参考:『最も賞賛されるべき現代建築の一つ。フランク・O・ゲーリー設計の「グッゲンハイム・ビルバオ」

一つの建築が街を再生させた「ビルバオ効果」

グッゲンハイム・ビルバオの夜景

前途の通り人口35万人の街に、この美術館目当てに世界中から観光客が集まり、来館者数は年間100万人以上。グッゲンハイム・ビルバオが竣工した1997年以前と比べて約20倍以上に増えている。

美術館の来館者数増加とともにビルバオにもたらす経済効果が大きくなっていった。オープンして最初の3年間で400万人がビルバオを訪れたことになり、この街に約5億ユーロ以上の経済効果があったとの試算もある。

フランク・O・ゲーリーによる、今までにないようなデザインの一つの美術館が街を再生させた奇跡は「ビルバオ効果」と呼ばれ、世界中からさらに注目を集めることになった。

美術館からはじまる町おこし

「ズビズリ橋」から「イソザキ・アテア」を見る

グッゲンハイム・ビルバオの完成後、ビルバオの街ではネルビオン川沿いを中心に再開発が進んだ。サンティアゴ・カラトラバ設計のズビズリ橋や磯崎新設計の通称イソザキ・アテア、ノーマン・フォスター設計のメトロの駅など世界の有名建築家の作品が作られた。また、メトロの駅の整備とともにトラム(日本で言うところの路面電車)も開業した。

バスク地方であるビルバオはバルも多く、タパスも美味しい

もともと土日に休業することが多かったビルバオの飲食店は、土日を含め観光客が訪れやすいように営業日時を改めた。もともとバスク地方であることからタパスなども非常に美味しく、隣町のサン・セバスチャンとともに人気を集めている。

脱構築主義(デコンストラクション)建築の実現の走り

グッゲンハイム・ビルバオはフランク・O・ゲーリーのような脱構築主義(デコンストラクション)の建築家のデザインの中でも最も大規模な建築物の一つで、この美術館の実現が最初と言っても過言ではない。この後、同じバスク地方であるエルシゴという小さな村にゲーリー設計のワイナリーができたこともあり、世界中でこのグニャグニャの形をしたデザインの建築が増えた。ゲーリー設計のパリの「ルイ・ヴィトン財団美術館」もその一つだろう。

また、ザハ・ハディドやコープ・ヒンメルブラウなど実現不可能と言われていた建築が、3DCADなどのテクノロジーの進化によって実現できてきたことも、グッゲンハイム・ビルバオの成功例があったことが後押ししているに違いない。

巨大化する現代アートとサイト・スペシフィック

絵画や写真、彫刻など20世紀のアートは今思えば非常にコンパクトであった。それほどに現代アートは巨大化し、従来のホワイトキューブの中に壁を割り当てていく展示室では面積・容積ともに足りなくなってきている。空間全体を用いたインスタレーションやもはや建築を超えるようなスケールの現代アートも登場している。

例えば、グッゲンハイム・ビルバオでは100mを超える長さの展示室にリチャード・セラの巨大な彫刻が、ダイナミックに展示されている。また、入れ替え可能なホワイトキューブの展示室ではなく、特定のアート作品に特化したサイト・スペシフィックな展示空間も多用されるようになった。

これら現代アートと展示空間の変化は、グッゲンハイム・ビルバオのオープンが始まりだったように考えざるを得ない。

フランチャイズ化する美術館

via : https://www.flickr.com/ Louvre Lens Sanaa

もともとニューヨークのグッゲンハイム美術館を運営するグッゲンハイム財団は、増え続けるコレクションの行き場に苦悩していたが、それをグッゲンハイム・ビルバオをオープンし、拡大路線にシフトすることで解決する意図があった。ビルバオの成功からアブダビやラスベガス、グアダラハラでユニークなデザインの美術館を作る計画を推し進めている。

また、グッゲンハイム財団の成功を見て、ポンピドゥ・センターは坂茂デザインのポンピドゥー・センター・メス、ルーブル美術館はSANAAデザインのルーブル・ランス、テート・モダンもヘルツォーク&ド・ムーロンによる文官をオープンさせている。

 

フランク・O・ゲーリーの不定形な曲面を幾重にも重ねたようなデザインのグッゲンハイム・ビルバオ。その一つの建築が引き起こした「ビルバオ効果」は、色々な時代の流れを変え、世界を席巻する現象になった。私設の大きな美術館の少ない日本では想像し難いが、それは今でも続く大きな流れでもある。

大前洋輔

大前洋輔

空間だけでなく色々なモノやコトのデザインをしています。

建築と美味しい食べもの、南の島々を探しによく旅に出ます。

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高低差のあるフロアを交互につなげたスキップフロアの家。

シンプルな外観の中に日常を楽しむ工夫がギュッと凝縮。

広々と心地よく暮らせます。