「老後の豊かな暮らし」についてノースアイランド岩永慶子氏に訊く
誰もが、将来の暮らしに不安を抱いている昨今。果たして年金はどれだけもらえるのだろうか、老後のためにどれだけの貯蓄が必要なのか、疑問に思っている人も多いだろう。
今回は株式会社ノースアイランド常務取締役である岩永慶子氏と梅村和利氏に、老後の豊かな暮らしについて伺った。
プロフィール
岩永慶子
株式会社ノースアイランド常務取締役。1963年生まれ、大阪府出身。趣味は、料理・旅行。1984年大手証券会社入社、2000年株式会社ノースアイランド入社。「 FP が身近にいる安心 」をモットーに FP 相談窓口の普及に努める。FP 業務の中核である個別相談に注力する一方、年間50回を超える研修・セミナーを担当。TV、新聞連載等多数。
梅村和利
株式会社 theHOUSE 代表取締役。大学の経済学部を卒業後、税理士事務所やプラント関連の建設会社勤務などを経て、2004年、新栄クリエイトを創業。「本物の環境にやさしい家」を目指してブランド「the HOUSE」を立ち上げ、100棟を超える住宅の設計、建築、リノベーションを行う。また、戸建賃貸「casita」を開発し、そのコンセプトと住宅としての性能の高さが評価され、2012年より本格的に全国販売が開始される。
豊かさとは「選択肢」
経済的な豊かな老後を迎えるためにどうしたらいいのか。岩永氏は、豊かさとは「選択することができる人生」だとし、限られた選択肢の中から選ぶのではなく「数多くの中から自分が本当にやりたいことを選ぶことができる、諦めない人生が豊か」であると述べている。
近年は年金もわかりづらくなり、年金の額や支給開始年齢が以前と比べると厳しい方向に変化しつつあるのが現状だ。どのような心持ちで、将来の準備を具体的にしていけばいいのだろうか。
岩永氏によると、近い将来、1.2〜1.5人で1人のシニアを支えることになるだろうとのこと。肩車状態で、どう考えても今の制度のままでは回りきれないので、ここ10年で制度の見直しがされているという。「実際、自助努力と言われるが本格的に考えていかないと”選択肢を持てる人生”は難しいのではと感じる」と話している。
老後資金はどれだけ必要か
では、将来はどれぐらいの蓄え、可処分所得があれば暮らしていけるのか。今のシニアの人たちでよく出てくるのは、夫が中心で働いて妻は専業主婦の標準世帯。2人合わせた年金は22万円ほど、それに対して豊かな生活は35万くらいであるため、ひと月あたり13万円足りないと岩永氏は計算する。
家計調査の平均だと、30万円くらいの生活をしていても8万円ほど足りない。年間でみたら100万円になる。100歳までと考えると、今のシニア(もうすぐシニアに入るひと)にとっては3500〜4000万円が一つの目安がなるそうだ。
100歳まで生きる時代
平均余命という言葉もあるが、100歳近くまで長生きする時代が来つつあるのかもしれない。
岩永氏によると、女性の最多死亡年齢は93歳、男性は87歳なので日本は長生き。「セカンドライフといってもひとくくりにできない。60歳や65歳の定年退職のあとがセカンドライフなのではなく、セカンドライフの中にも前期と後期がある」と話している。
自分にとって理想のセカンドライフを過ごすためにも、”選択肢を持てる人生”が求められるだろう。
ローン金利は驚くほど低金利
なかなか自己資金だけでは、投資や資産活用も難しい。過去にはローンはできるだけ借りない方がよく、頭金をいっぱい貯めて頭金でお金を入れて借り入れはしない方がいいと言われていた時代もあったが、一概にそうとは言えない。岩永氏は「その人を取り巻く環境や今の世の中の状況など全部を含めて見た時に、自分にとっては何を使うのが得なのか、どの方法がいいのかを考えていかなければならない」と話している。
住宅購入の際はほとんどの人がローンを使うが、住宅購入は5年など短い期間ではないはずだ。時間が長いので計画性が必要となり、岩永氏によると「金融の世界に30年以上いるが、こんなローン金利は見たことがないというほど低金利」とのこと。
3%で借りるのと0.6%で借りるのとでは、1年の感覚で見たらそんなに金利の違いはわからない。しかし、例えば30年などの長いスパンで見ると、3000万円借りても1%違うだけで500〜700万円返済額が違ってくる。
そして岩永氏は「今は持ち家であれば、住宅ローン減税とか支払うべき税金をローンの残債1%分は戻してもらえるので今は逆の現象が起こっている」と話す。ローンの返済金利よりもローン減税で戻してもらえる還付の方が大きいので、借りた方が得という現象が起こっていると述べた。
戸建賃貸経営という選択肢
収益物件の中でも、戸建ての賃貸住宅は非常にニッチな分野。梅村氏は戸建てをおすすめする理由として、「集合住宅はこれまでの住宅環境においてたくさん供給されてきたけれど、戸建ての賃貸の供給は非常に少ない。戸建てなので少ないロットから投資ができる」と話す。一般のサラリーマンでもマイホームを買うのと同じくらいのイニシャルコストで資産形成が始められるので、問い合わせをもらうことが多いのだとか。
マイホームを取得するときに過剰な設備にならないコストパフォーマンスの高いものを2棟建てて、1棟は自分で住みながらもう1棟は賃貸収入を得るという人が結構いるそうだ。
自分の気に入ったものを貸す
岩永氏は戸建賃貸経営について、「私のお気に入りを人に貸すということがすごく大きいことだと思う」とコメント。どうしてもアパート経営というと大掛かりだということでサラリーマンが自分の生活設計の中に戸建賃貸経営を組み込んでいく方法論が昔はなかった。「でも最近は選択肢として生み出されているのでいいことだと思う」と岩永氏は話している。
梅村氏は最後に「豊かな人生や選択肢の多い人生を送っていただくために、早め早めに準備していただく際の1つの選択肢になればいいなと思う」と述べた。