トップライトの柔らかな光が空間に広がる、アルヴァロ・シザ・ヴィエイラの「ポルト近代美術館」

皆さんは、「アルヴァロ・シザ・ヴィエイラ」という人物をご存知ですか?

「アルヴァロ・シザ・ヴィエイラ」はポルトガル随一の国際的建築家。地域性を反映させたシンプルで現代的なフォルムやデティールと、自然の摂理というべき詩的な造形美で、相反する要素を自然に共存させた独特の作品に定評がある世界の注目を集める建築家です。

アルヴァロ・シザが手がけた作品の一つに「casa cube」のようにトップライトが印象的な作品があります。今回はアルヴァロ・シザのトップライトの間接光が静かに柔らかく降り注ぐ「ポルト近代美術館」をご紹介。

【アルヴァロ・シザ・ヴィエイラ Alvaro Siza Vieira】

1933年ポルトガル、ポルト近郊のマトジィニョス生まれ。1954年最初の建築プロジェクト「4つの家」を実施。1955-58年建築家フェルナンド・ターヴォラのもとで働いた後、独立する。数々の国際コンペティションへ招致されるとともにポルト大学建築学部で教鞭を執るかたわら、ローザンヌ工科大学、ボコタのロス・アンデス大学、ペンシルヴァニア大学、ハーヴァード大学大学院デザイン学部客員教授を経て、現在、アルヴァロ・シザ・アルキテット主宰。現代的でありながら詩的な造形美を得意とする建築家。

豊かな緑の中に溶け込む「ポルト近代美術館」、別名「セラルヴィシュ現代美術館」。

ポルトに建てられた財団が運営する、森や邸宅、牧草地帯が広がる庭園の中に佇む「ポルト近代美術館」。「美術館を列車や車や飛行機であるかのように造っている」と表現されるほど、広大な敷地の中にある豊かな緑と調和している。

環境に溶け込みすぎて一瞬「ん?これが美術館かな?」と思わせるほど圧迫感や抵抗感がない、公園の中に静かに納まる建物。

展示物が映える、“ 美術館 ”としての機能を果たす建物。

アールデコの住宅が建つ、緑豊かな敷地の中に設計された「ポルト近代美術館」は、光が反射を上手に取り入れた長いアプローチが印象的。

室内空間も他に類をみないほど空間が調和する。外観と同様に美術館の建物が支配的な要素となることを嫌っているのか、美術館としての本来の機能“ 展示物を引き立たせる ”かのごとく圧迫感がない。

ぬくもりと安心感を与えるトップライトから溢れる優しい光。

真っ白な壁と2枚仕立てのトップライトからこぼれる美しいヒカリ。トップライトからの自然光の光が心地よい吹き抜けのエントランスを演出。トップライト・吹き抜けというと「casa cube」を思い出さずにはいられない。建物方角に関係なく降り注ぐ太陽の光は、そこにいる人に独特のぬくもりと安心感を与える。

キュートな電球の照明に、窓からもふんだんに光を取り入れている図書室。移ろいゆく季節を眺めながら、ノスタルジックな雰囲気を醸し出す空間にいると、日々の忙しさや、小さなストレスさえもが何でもないようなものに感じられる。

 

控えめな白い壁に包まれてた非常にシンプルな建築「ポルト近代美術館」。しかし、決して人を退屈させない複雑な空間構成と、アルヴァロ・シザらしい何かを物語る詩的な美しさの感じられる建築だ。