工藤浩平が手掛けた300年の歴史を未来へ紡ぐ住まい「東松山の家」

建築家・工藤浩平による「東松山の家」は、先祖代々300年以上にわたって住み続けてきた自然豊かな土地の中で、思い入れのある離れを残しながら未来に引き継ぐことを目指した改修と増築の計画です。プランでは敷地の記憶と家族の思い出を大切にしつつ、現代的な暮らしに適応する新たな住まいを実現しました。

先祖代々300年以上続く思い出が残る土地

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

敷地は、埼玉県にある豊かな自然に囲まれた広々とした環境に位置しています。300年以上にもわたる長い歴史を刻んできたこの土地には、既存の離れが残されており、家族にとって特別な意味を持つ建物でした。設計の背景には、この離れを活かしながら、快適で機能的な住空間を生み出すことが目指されました。

新旧の調和を目指した外観デザイン

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

外観は、既存の離れと新たに増築された部分が違和感なく調和するよう工夫されています。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

既存の離れを「寝室」棟として残し、敷地内に3つの性格の異なるガーデンをつくりながら、大きな2つの屋根を増築。

東松山の家
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1つは食事やくつろぎに集う「リビンク・キッチン棟」、

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

もう1つは壁のない軒下空間の「なんでもテラス棟」です。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

2つの大きな屋根を庭を作りながら全体を包み込むように増築することで、全体としてひとつの空間として感じられながらも伸びやかな生活ができる空間を目指しました。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

2枚の屋根は合理的かつ経済的に大きくつくるために木製サンドイッチパネルのストラクチャーとし、屋根の形状は角度や高さを不規則に設けることで、のびやかな印象を演出しています。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

既存部は、前面をふさいでいた母屋がなくなったことで縁側やバルコニーのような外とつながる開放的な空間に。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

古くから残る井戸をアルミサッシで抱き込むかたちで残し、以前の面影を残しながらも増築部とのバランスを考慮し、アルミサッシやスチールのストラクチャーを増築部と同じ色合いに塗り直して新しいガラスで囲っています。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

そこをサンルームとして内部化することで、夕食後の読書を楽しむ縁側として、朝日を浴びながら朝刊が読めるようなテラスとして、外とつながる多用途なスペースとしています。

広がりとつながりのある空間

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

リビング・キッチン棟はそれぞれが一体となった開放的な空間が特徴です。大きな窓からは四季折々の自然光が差し込み、室内に明るさと温かみをもたらします。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

窓越しに室内からも外の様子を伺うことができ、子どもたちが遊ぶ様子を横目に眺めることができます。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

柔らかな木材の質感を生かした内装によって、どこにいても落ち着きが感じられる雰囲気を演出しています。

プライベートと開放感のバランス

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

離れの2階は、家族それぞれのプライベート空間が確保されつつ、開放感も大切にした設計となっています。

東松山の家
Photo : Kai Nakamura

勾配天井や大きな窓が、視覚的な広がりを生み出し、心地よい居住空間を実現しています。

過去と未来をつなぐ家

以前の趣を残しながらも、現代の暮らしに合わせた快適さが加えられた「東松山の家」は、過去の記憶と未来への希望を繋ぐ住まい。自然と共生する心地よさと、家族の歴史を大切にした温もりのある空間です。