「作品を絞って鑑賞するとより楽しめる」アートプロデューサー・秋元雄史に聞くアート鑑賞のポイントと練馬区立美術館の見どころについて

前編:「使いやすさより、自分が気に入っているかどうか」アートプロデューサー・秋元雄史が大切にしているデザインや、好きな空間について

1985年10月1日に都内3番目の区立美術館として開館した練馬区立美術館。こちらの館長を務めるほか、直島アートプロジェクトなどの活動を通して人々とアートとの間を繋いできた秋元雄史さん。今回は秋元さんに、アート鑑賞のポイントと練馬区立美術館の見どころについて伺いました。

観たい作品を事前にリサーチするのが鑑賞のコツ

アートというと少し敷居が高い印象を受ける方も少なくないと思いますが、おすすめのアートの楽しみ方はありますか。

「直島などの地域を巻き込んだアートイベントは初心者でも楽しみやすいのではないでしょうか。

あとは、アート作品の鑑賞の秘訣ではありませんが、先に挙げたアートイベントは音楽コンサートと同じように、その場のライブ感が面白いと思っています。

一方美術館での鑑賞はアートイベントと違って作品そのものを見るという形ですから、作品への知識があった方が楽しめるかもしれません。美術館は少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、これはこれで作品への理解を深めるための場として有効です。ひとつの展示会ではせいぜい集中して見ていけるのは10点ほどですから、目玉となっている作品を中心にそれぐらいの数を集中的に見ていくという方法もあります。

目玉になっている作品を鑑賞前にネットなどで調べて情報を頭に入れてから訪れると効率的にアートを楽しめると思います。その展示における一番の傑作や目玉作品が一番最初に展示してあるわけではないので、最初に集中力を使い果たしてしまうのは勿体無いのです。よく最初だけ熱心に見ている人がいますが、一押しの作品だったり、自分が気になるものを調べて、作品を絞って鑑賞するとより楽しめるのではないかと思います。」

気に入った服を着るような感覚でアートを飾ってみると良い

コロナ渦によって在宅時間が増え、アートをオフィスや自宅に飾る人が増えてきましたが、アートが日常にもたらす効能や影響はどのようにお考えですか。

「食べ物や食器、服など自分の身の回りのものをこだわる人は多いですよね。美術もその1つで、自分のこだわりの中で考えれば良いと思います。歴史上の名画や、広く人気のある作品などたくさんありますが、自分が気に入った服を着るような感覚で、室内に気に入った絵やアートを飾れると良いのではないかと思います。」

練馬区立美術館で観るべき、洋画家・野見山暁治

秋元さんは今年で練馬区立美術館館長に就任されて4年ほど経ちましたが、その魅力とはどういった点でしょうか。

野見山暁治《落日》1959年、油彩・カンヴァス 練馬区立美術館蔵

「19世紀から20世紀の日本近代美術の中でも、洋画家の優れた作品が多いのが特徴かもしれません。野見山暁治(のみやま ぎょうじ)さんという洋画家の作品を扱っているのですが、収蔵点数も多く、抽象画のような独特なタッチがユニークで面白いと思います。」

ライフイズ”アート”

アートイベントや美術館の展示企画など、様々な観点から人々とアートとの繋がりを生み出している秋元さん。そんな秋元さんにとってライフイズ◯◯の〇〇に入るものは何でしょうか?

「仕事もプライベートもですが、“アート”です。“アート”が人生そのものなので、それ以外の言葉が出てこないですね。子供の頃から描くことが好きで、落書きのようにして絵を描き続けてきましたし、他に人の描いた作品を見るのも好きですね。」

気軽に、自分の好きなようにアートを楽しんでほしい

自分が気に入っている服や雑貨のように、自分のこだわりでアートと触れるのがおすすめと話す秋元さん。様々な観点でアートとの接点を生み出す秋元さんの活動に今後も注目です。