「飽きの来ないデザインを目指したい」建築家・手嶋保のデザインへの視点やこれからの住宅に求められるもの

日本建築士会連合会賞にて優秀賞を受賞した〈伊部の家〉や、日本建築学会作品選集に入選した〈桜台の家〉など住宅設計を中心に手掛ける建築家・手嶋保。今回は手嶋さんに、日常で大切にしているデザインやこれからの住宅に求められるものについて伺いました。

建築家・手嶋保

建築家。1963年福岡県生まれ。1986年東和大学建設工学科卒業。1990年吉村順三設計事務所入所後、1998年に手嶋保建築事務所設立。〈伊部の家〉〈桜台の家〉など、住宅をメインに様々な建築設計を手掛け、高い評価を得ています。現在はご自身の活動の傍ら、関東学院大学非常勤講師も務められています。

暮らしの中で大切にしているデザイン

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「耐久性ですかね。物質としてだけではなく、内容が古びないということを常に意識していて、長持ちするデザインであるということを心掛けています。」

なるほど、日本は壊して立て直してを繰り返してきた文化だと思いますが、耐久性というといつまでも凛として佇むようなイメージでしょうか。

「飽きの来ないデザインが大切だと考えています。とは言っても、同時に新鮮さも必要だと思うので、そこの場所の本質的な良さを持てているかどうかも重要なポイントですね。毎日その場所に降り注ぐ光は場所の本質であり、毎日空間に新鮮さを与えます。」

確かに、手嶋さんが手掛けられた建築は光が印象的なものが多いように感じられますね。

好きな場所、空間

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「リラックスできるような場所が好きです。気取ったような空間は落ち着かないので、コージーな、ヒューマンスケールがある部屋に魅力を感じます。それと同時に視線がどこまでも伸びているような場所も好きです。それぞれ対照的ですが、建物に入ったときに疎外感ではなく、『ここに入ってきていいんですよ』と言った肯定感が感じられる場所に惹かれます。」

師・吉村順三から学んだ“無私”であることの大切さ

Via : instagram @tamotsuteshima

大学卒業後、吉村順三事務所に入所されましたが、師である吉村さんの元で学んだことはどのような形でご自身の作品に影響を受けていらっしゃいますか。

「先生の作ってきたデザインに影響を受けているとは思いますが、それ以上に生き方や考え方に影響を受けました。特に、住む人のことを大切に考えるということ、建物の外観としても控えめな、人の邪魔にならないものを作るという視点ですね。先生の言葉で印象に残っている言葉に「無私」というものがあるのですが、それは『素直である』ということと『日本の風土に溶け合う』ということを意味しています。先にお話しした『飽きが来ない』ということにも通じるポイントかもしれません。」

これからの住宅に求められるもの

Via : http://www.tteshima.com/

新型コロナウィルス渦の中での住宅デザインのトレンド、またこれからの住宅に求められるものは耐久性と伺いましたが、他にも重要なポイントはありますでしょうか。

「SDGSなどと言われていますが、飽きの来ない空間の本質的な質の高さが重要だと考えています。僕の建主で、ファッションライターの方がいらっしゃるのですが、彼が私に最初に言ったのが、後から振り返って『2015年頃流行していた家にしたくない』というものだったんです。ファッションはシーズン毎にトレンドが変わっていいのですが、「建築とファッションは同じではダメで、だから手嶋に頼みたい」ということでした。家は生活のベースになるものであるべきだ、ということですかね。」

飽きの来ないデザインの大切さ

シンプルながらも心地の良いデザインに隠されたこだわりは、師である吉村順三さんから学んだ“無私”の考えが大きく影響しているようです。そんな手嶋さんのデザインのインスピレーション源や、家具デザインのこだわりについては「『調和が取れたものが大切』建築家・手嶋保のインスピレーションの源と家具デザインへのこだわり」からどうぞ。