5館が5感を刺激する。青森のアートの魅力を全身で体感するプロジェクト「AOMORI GOKAN」

青森県内の5つの美術館とアートセンターで、各施設が持つ特徴と県内のアートや文化をつなぎ、その魅力を発信する連携プロジェクト「5館が五感を刺激する―AOMORI GOKAN」 をご存知でしょうか。このプロジェクトでは、それぞれ異なる特色を持つ5館が共通のテーマを設け、アートを盛り上げていきます。

アーティスト、鑑賞者ともに刺激的な体験をもたらすスポット「青森公立大学国際芸術センター青森」

「青森公立大学国際芸術センター青森」は、国内外のアーティストを招聘し、一定期間滞在しながら創作活動を行うアーティスト・イン・レジデンス・プログラムと、展覧会、教育普及を3つの柱に推進する施設として、2001年に開館しました。

設計は建築家・安藤忠雄。

周囲の起伏に富んだ自然環境を壊さないように配慮し、建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとした建築は、谷沿いに橋が架かるようなイメージの直線型の創作棟と宿泊棟、さらにギャラリーや円形の屋外ステージを備えた馬蹄型の展示棟の3棟から構成されています。

ここでは時代を担う新たな芸術環境の場として、さまざまな芸術創作や鑑賞の機会を提供するとともに、アーティストと学生や市民との多様な交流を図りながら、地域独自の新しい芸術文化を作り上げることを目指しています。また、春から秋にかけては敷地内の森の散策や、20数点を数える野外彫刻の鑑賞も楽しむことができます。

施設でのアーティスト・イン・レジデンスプログラムは、年に2回、推薦型と公募型によって行われ、各プログラムとも約3カ月間の滞在となっています。そのほか、年間を通じて、プロジェクト型、個展型、ワークショップ型と多彩なAIRプログラムが開催されています。

滞在するアーティストの新しい想像力をかきたて、また訪れる人にとっても刺激的な新しい芸術体験を与えるスポットです。

参考:建築家・安藤忠雄による青森の自然を取り込み創造へ導く空間「国際芸術センター青森」

国際芸術センター青森

所在地:青森県青森市合子沢字山崎152-6
開館時間:10:00〜18:00 ※展覧会は、10:00~18:00 ※ラウンジは、9:00~19:00
定休日:不定休
電話番号:017-764-5200
URL : http://www.acac-aomori.jp/

青森県の豊かな芸術風土を発信する「青森県立美術館」

2006年に開館した青森県立美術館。設計は建築家・青木淳によるもので、建築は隣接している三内丸山縄文遺跡の発掘現場から着想を得て設計されました。

上向きに凸凹した大地の切れ目(壕)に、白い箱がかぶさる構成で、独創的な空間となっています。美術館建物の外壁は煉瓦にアクリルシリコン塗装を施すことで、耐久性・防汚性を高めています。

展示室は地下2階と地下1階からなり、常設展示室は1作家1部屋とし、多様な青森県出身の作家の扱いに差がでないように配慮されています。展示機能以外の、コミュニティギャラリー、スタジオ、ワークショップ、レストランなどへのエントランスとなるコミュニティホールは、その機能から四面同じ建具とアーチ窓の仕上げとし、そこから四方に広がる各部屋へアクセスできるようになっています。

また、エントランスのネオンサインや、館内のロゴデザインなどは、アートディレクター・菊池敦己が手掛けており、シンプルなデザインで統一されています。

「青森県立美術館」は、奈良美智や棟方志功など地元の作家を中心とした国内の作品はもとより、世界的画家シャガールの作品を収蔵していることでも有名です。

青森県出身の画家、彫刻家・奈良美智氏の作品「あおもり犬」は、高さ8.5mの巨大なアートで、三内丸山遺跡から出てきた犬を表現しており、犬の像と美術館の建築が一体化することを意図して製作されました。

また、巨匠・シャガールが描いたバレエ「アレコ」の舞台背景画4点のうち3点を「青森県立美術館」が所蔵しており、「アレコホール」というスペースで展示されています。

絵は1枚約9m×15mという巨大なもので、「アレコホール」も1辺が20メートルの立方体の広さをもつ大きなスペースです。このホールは4フロア分の吹き抜けになっており、世界でも稀な広い展示室です。

また、館内には「4匹の猫」という可愛い名前のカフェが併設されており、美術鑑賞の合間に県内産の食材にこだわった食事やスイーツが楽しめます。シャガール、奈良美智、棟方志功など世界的に有名な芸術家の作品が鑑賞できるとともに、建物やミュージアムショップなども一見の価値がある見応えたっぷりな美術館です。

参考:建築家・青木淳による縄文遺跡の発掘現場に着想を得た「青森県立美術館」が豊かな自然に育まれた芸術風土を発信する

青森県立美術館

所在地:青森県青森市安田字近野185
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎月第2、第4月曜日 (この日が祝日の場合は、その翌日)
年末年始
料金:一般 510円 / 大学・高校生 300円 / 中学生以下 100円
電話番号:017-783-5244
URL : https://www.aomori-museum.jp/
アクセス : 青森市営バス6番バス停から三内丸山遺跡行き「県立美術館前」下車

街に溶け込みアートを提供する「十和田市現代美術館」

青森県十和田市が推進するアートによるまちづくりプロジェクト「Arts Towada」の拠点施設として2008年に開館した「十和田市現代美術館」。

国内外で活躍する22人のアーティストによる常設と市民活動スペースから構成されています。設計を行ったのは妹島和世とともに建築家ユニットSANAAを主宰する西沢立衛氏。個々の展示空間を「アートのための家」として独立させ、それらをガラスの廊下で繋いだ構成となっています。

建築は鉄骨造で、外壁にはガルバリウム鋼板を使用。ガルバリウム鋼板は平滑葺きのため、部分的な主張は弱く、1つのボリュームとしてまとまった印象を受けます。

約4000㎡の美術館の敷地内には、それぞれにアートが入った15個の大小の箱を回廊が繋いでいます。

美術館は外部にもアートが配置され、全体では22人のアーティストが、この美術館のために制作した新たな作品を発表します。

建築の内外の展示物は通りからも鑑賞できるようになっており、通りを歩いているだけで、街そのものが美術館のように感じられ、街とアートの一体感を感じられます。

また、外から外部展示や建物内のアートを楽しめるだけでなく、建物内から見ても街と一体となったような印象を受けるのも特色のひとつです。併設されたレストラン「cube/キューブ」では、りんごやにんにくなど地元食材をふんだんに使用した食事が味わえるほか、ショップでは美術館オリジナルグッズやデザイナーが手がけたミュージアムグッズのほかにも、十和田ならではの工芸品やクラフト作家のグッズ、地元の名産品も購入することができます。

建築と街づくりが一体となり、新感覚でアート作品を楽しめる「十和田市現代美術館」。青森を訪れる際はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

参考:アートと街が交ざり合う、建築家・西沢立衛による街に開かれた美術館「十和田市現代美術館」

十和田市現代美術館

所在地:青森県十和田市西二番町10-9
開館時間:9:00〜17:00(最終入館 16:30)
※cube cafe&shopも同様(カフェラストオーダー 16:30)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始
料金:一般 1800円(企画展閉場時:1000円)、高校生以下 無料
TEL:0176-20-1127
Web:https://towadaartcenter.com/

「記憶の継承」をコンセプトとした田根剛によるミュージアム「弘前れんが美術館」

2020年開館した、建築設計を田根剛が手掛けた現代美術館。同館の大きな特徴は、明治・大正期に建設された元シードル工場「吉野町煉瓦倉庫」を改修した煉瓦造りの建築。

「記憶の継承」をコンセプトに、できるかぎり煉瓦倉庫の素材を活用し、その姿をとどめることを前提に改修が行われました。建築は、美術館棟とカフェ棟の2つから構成されており、その周囲を芝生の広場が囲む開放的なミュージアムとなっています。

田根は今回、既存の煉瓦壁を無傷で保存するため、鋼棒を煉瓦に串差すという工法を採用。

一方、新たに設けられたエントランスは、独特な積み方の煉瓦によって、外側から押されたようなドーム形状をしています。ここでは明治期のレンガ壁と、それを継承した新たなレンガ壁の両方を楽しむことができます。

老朽化した屋根は、シードルをイメージした「シードル・ゴールド」のチタン製菱葺屋根で覆うことで、シードル工場としての記憶を次世代へと継承することを目指しています。

展示室では、既存の壁に塗られていた古いコールタールを、毒性などを検証したうえでそのまま取り入れることで、重厚感ある雰囲気を生み出しています。

また、美術館の隣には、同じく倉庫の煉瓦壁を活かしたカフェ・ショップ棟を配置。店内にはシードル工房が設けられており、ここで製造したシードルが味わうことができます。

土地の歴史を継承し、市民の交流・憩いの空間としても機能している「弘前れんが倉庫美術館」。今後の活動がどのように展開されていくのか注目のスポットです。

参考:100年の歴史を持つ煉瓦倉庫を延築!建築家・田根剛による初の国内美術館建築「弘前れんが倉庫美術館」

弘前れんが倉庫美術館

所在地:青森県弘前市吉野町2-1
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで、カフェ・ショップは9:00〜22:00
休館日:火(祝日の場合は翌日)
料金:一般 1300円 / 大学・専門学校生 1000円 / 高校生以下、弘前市内の留学生、満65歳以上の弘前市民は無料
電話番号:0172-32-8950
URL : https://www.hirosaki-moca.jp/

アクセス : 「弘前駅」徒歩20分 タクシー 7分 弘南バス100円バス(土手町循環)
→弘前駅中央口バスのりば「D100番」より乗車9分
→「蓬莱橋」下車・徒歩5分

出会いを生み出す、これからの美術館のかたち「八戸市美術館」

1986年に開館し、老朽化などを理由に2017年に閉館した〈八戸市美術館〉が、2021年に全面建て替えを経てリニューアルオープン。設計を手がけたのは、プロポーザルで選定された、建築家の西澤徹夫と浅子佳英。

地上3階建ての建築は、主に2種類の空間によって構成されています。

エントランスを入ってすぐ目の前に広がる、約17mの天井高を持つ「ジャイアントルーム」は、それぞれの展示室を自由に行き来できるハブのような空間。

さらに、9mの高さに設置されたワイヤーでアート作品を飾ったり、可動式の棚やカーテンで空間を区切ったりと、さまざまな用途に対応できるフレキシブルな空間です。

一方の、異なる機能に特化した「個室群」は、これは、「多様なプログラムに対応できる複数の部屋で展示空間を構成できないか」といった浅子の視点から生み出されたアイディア。

映像作品の映写に適した暗い個室や、光に弱い日本画の展示を想定したグレーの壁の個室など、多様な作品のスタイルに合わせた展示空間となっています。

展覧会のみならず市民が参加できるワークショップやイベントなどのプロジェクトを提供している「八戸市美術館」。アートを通して人と人が出会い、新たな価値を見出す「こと」を生み出す場としても機能しています。

参考:人とまちを育む”出会い”を生み出す空間。建築家 西澤徹夫、浅子佳英・森純平のチームによる「八戸市美術館」

八戸市美術館

所在地:青森県八戸市大字番町10-4
開館時間:10:00〜19:00
休館日:火曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
TEL:0178-45-8338
Web:https://hachinohe-art-museum.jp/
アクセス : JR東北新幹線で「東京駅」から約3時間、「新青森駅」から約30分、「八戸駅」下車。「八戸駅」からJR八戸線で約10分、「本八戸駅」下車。徒歩約10分。

建築好きにもおすすめ!五感で楽しむ青森のアートシーン

展示はもちろん、安藤忠雄や田根剛など、大御所から若手まで様々な建築家による空間も大きな魅力の「AOMORI GOKAN」。多様なアーティストによる作品をはじめ、美術館の建築も合わせて鑑賞することで、今まで気づかなかった新たな発見があるかもしれません。