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死なないための住宅!? 荒川修作+マドリン・ギンズによる「三鷹天命反転住宅」

荒川修作という建築家をご存知だろうか?

詩人・マドリン・ギンズとともに、岐阜県にある「養老天命反転地」などを生み出し、一般の建築の概念では捉えきれない作品を残している。建築家の肩書きはその一旦でしかなく、芸術家・アーティストとして捉える方が合致する稀な人物である。

その荒川修作と生涯のパートナーであるマドリン・ギンズが手がけた集合住宅が三鷹にある。

身体と精神を遊びながら鍛える「三鷹天命反転住宅」

荒川修作とマドリン・ギンズによる三鷹天命反転住宅はただの集合住宅ではない。「死なないための住宅」である。

この住宅を通して身体と精神を遊びながら鍛え、死なない体・強靭な身体を作るというのだ。人はやがて死ぬという固定概念に争う「 天命反転」を実践するための試みである。

五感で感じる空間

カラフルなのは外観だけではなく、その内部も柱や壁、床、天井だけでなく手すりや配管、カーテンに到るまで様々な色で埋め尽くされている。モダニズム建築とはもちろん全く異なるが、ルイス・バラガンなどの緻密に計算される色使いとも違い、五感を通して、精神にダイレクトに訴えかけてくるものがある。

信じられないかもしれないが、三鷹天命反転住宅には実際に暮らしている人もいて、全9戸のうち半数以上が埋まっている。残りは見学会やショートステイの時に解放している。そのため、世界中からこの建築見たさに訪れる人が後を絶たない。

そして、ユニークなのがその際に手渡される三鷹天命反転住宅の取説(取扱説明書)の役割をしているパンフレットだ。約30項目あるこの取説には

「2〜3歳の子どもでもあり、100歳の老人でもあるという者として、この住宅に入ってみましょう」

「月ごとにいろいろな動物のふりをして、住戸内を動きまわりましょう」

「少なくとも1日1回は、真っ暗にした住戸の中をぶらぶらと歩いてみましょう」

などと記されている。

カラフルな球体や円形、四角い部屋が連なった空間は、普段の生活では感じることのできない感覚を感じさせてくれる。

積極的に体を動かしたくなる仕掛け

ジャングルジムなどの遊具のような仕掛けで満ちた空間には、随所に積極的に体を動かしたくなる仕掛けが施されている。例えば、バランス感覚が必要な波打つような凸凹の床では歩き回ってみたくなったり、球体の部屋では声をあげてみて反響音に耳を傾けてみたくなったりと積極的な行動を喚起させる。

ハンモックやハシゴなども設置され子供が一番元気に振る舞っているが、大人も童心に帰って子供同様に動き回りたくなるだろう。

「死なないための家」、そして In Memory of Helen Keller ~ヘレン・ケラーのために~ と謳われる三鷹天命反転住宅は、多様な身体能力の違いを乗り越えて、それぞれに合った過ごし方や使い方が存在し、人ぞれぞれに自由な振る舞いを許容している。さらに想定外と言われる使い方すら期待しているのではないかと思わせてくれる。

 

「三鷹天命反転住宅」は、人間の身体に常に寄り添い、優しいバリアフリーやユニバーサルデザインとは全く異なり、対極に位置するような住宅である。バリアフリーやユニバーサルデザインに依存すると人間の身体や精神は衰えていく。近代が手に入れた快適な空間と引き換えに失った身体や精神があるのではないか、その失ったものを取り返そうとする荒川修作の提案である。

見学会は月に1,2日程度実施、ショートステイプログラムは3泊4日から申し込むことが可能。ともに要予約。

三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller

URL : http://rdloftsmitaka.com
住所:東京都三鷹市大沢2丁目2−8

#casa 編集部

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