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ピーター・ズントーの最高傑作「ヴァルスの温泉施設 (Therme Vals)」でラグジュアリーなスパ体験!

スイスのクール地方、ミネラルウォーター・ヴァルサー(VALSER)の生産地でもあるヴァルス。海抜1,200mのスイスの山中にあるこの街には、綺麗な空気の中でリラックスし、ラグジュアリーなスパ体験ができる温泉施設がある。

斜面を掘り、幾何学を挿入したような建築は、スイス出身で2009年にはプリツカー賞を受賞した建築家ピーター・ズントーの手によるもの。1996年に竣工したこの「ヴァルスの温泉施設 (Therme Vals)」は、ズントーの名前を世界に知らしめた最高傑作である。

ダイナミックな山と谷の自然に幾何学の建築が映える

ピーター・ズントーはヴァルスの温泉施設の設計にあたり、ブダペストやイスタンブール、ブルサといった古い温泉や風呂を視察した。結果として、静寂の中での入浴体験やお湯と触れ合いくつろぎ、五感でお湯や環境と触れ合う空間が誕生した。

斜面に対して幾何学的なヴォリュームを挿入するようなモダニズム的な手法で、ダイナミックな山と谷の自然と幾何学の建築が対比的に構成されている。斜面から続くように作られた屋根・屋上、地元ヴァルス産の石を利用した壁面は、より建築が映え、より風景を引き立てている。

いかにもスイスらしい山岳地帯を望むこの建築は、ゲニウス・ロキと言われるローマ神話の土地の守護精霊を感じさせる凛とした美しさを持っている。訪れてみれば、教会などの宗教施設のような神聖な何かを感じ取るに違いない。

ヴァルス産の石を積層させた壁が外も内もなく続いている。内部では凹凸があったり、外部では経年変化があったりと多彩な表情を作り出している。

世界トップクラスのラグジュアリーなスパ体験!

温泉施設はホテル棟から地下で繋がっている。レセプションでチケットを買って中へ。

地下を抜けて温泉施設に入る体験は、ゲストの気持ちをリセットして温泉と向き合うような体験をより強いものにする。外壁から続く石を積層させた壁面は、断層をモチーフにして洞窟のような雰囲気をより強くしている。

屋根のスリットから入る自然光は、程よく空間を照らしたり、壁面に陰影を作ったりとゲストの神聖な体験を演出している。細く雰囲気ある光源を持つペンダントライトや真鍮の手摺りが特徴的で、ラグジュアリーな空間作りがなされ、神秘的でさえある。

洞窟の中のように落ち着いた内部空間には、中央の浴槽を囲む柱のように4つの部屋がずれながら配置されている。ずれて配置されていることで空間が間延びせず、不均質になることが移動するきっかけになり、浴槽内を泳いだり、歩き回ったりすることでコルビュジエの建築のようなシークエンスを体験できる。また、スリットから入る光も不均質に壁面を照らすことで表情が豊かになる。

中央の浴槽は水温32°で、42°の「火の浴槽」や14°の「水の浴槽」、花びらが散らばる「花の浴槽」など温度や体験、明るさ、水の音の反響音によって空間の質が全く異なる。五感を使って温泉や空間を楽しむようになっている。

ところどころに開いた大きな開口からは、周囲の樹々や渓谷の様子を眺めることができる。また、スリットとともに自然光を取り込むことで、谷に対して手前と奥の変化をもたらしている。

寝椅子はこの建築に合わせてズントーがデザインしたもの。

細いフレームのディテールの建具は存在感を無くし、内部と外部がシームレスに繋がるように設計されている。ゴールドの扉は、手摺りとともに良いアクセントになっている。

外部に出ると水面が綺麗に反射する光が綺麗で、内部空間ともまた異なる体験をもたらす。ヴァルスの自然を背景に建つズントーの建築は、建築の中にいながらスイスらしい自然も五感で体感できる。

奥の開口部は、浴槽の中で内部とつながっているため自由に行き来ができ、劇的な空間の変化を体験できる。

ラグジュアリーステイの楽しめる7132ホテル

温泉施設の下の階にも、雰囲気を継承した客室などがある。ヴァルスの街が始めた施設は地元出身の実業家が買い取り、7132ホテルとして営業を開始した。

ホテルにはズントーがデザインした部屋や安藤忠雄、隈研吾など有名建築家による客室もありラグジュアリーステイが楽しめる。

7132ホテルのエントランスは、曲線を使ったダイナミックなデザイン。

ホテルのラウンジは落ち着いた色調でラグジュアリーな雰囲気。それでいてのどかな渓谷の眺めを味わえる空間だ。

テラスに出ると澄んだ空気を吸うことができ、この凛とした空気は背筋が伸びる。

 

ピーター・ズントーの最高傑作である「ヴァルスの温泉施設 (Therme Vals)」。山の中にあるだけあり、車で行くにも大変だが、チューリッヒからクール、さらにローカル線でイランツまで行き、バスで約1時間とアクセスは良くない。それでもラグジュアリーステイを楽しんだり、世界中からこの建築を観るためだったりと、多くの人が訪れる。

フォトジェニックなデザイン以上に、五感を通して感じる入浴体験や建築と自然が作る空気など神秘的な体験をもたらしてくれる。ズントーの建築は雑誌など見ても美しいが、特にヴァルスの温泉施設は、実際に建築の中に身を置いてみないと全ては理解できない。是非ともこの神聖な建築とスパ体験を味わって欲しいと思う。

Therme Vals 7132 Hotel – ヴァルスの温泉施設

入場料 : 80CHF
電話 : +41 58 713 20 00
URL : http://7132.com
住所 : 7132 Vals, Switzerland

大前洋輔

大前洋輔

空間だけでなく色々なモノやコトのデザインをしています。

建築と美味しい食べもの、南の島々を探しによく旅に出ます。

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