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デ・スティルやダッチ・デザインの国、オランダで多様でユニークな建築が作られる5つの理由。

オランダというと風車やチューリップのイメージがあるが、建築やデザインに興味がある人にとってはとにかく多種多様でユニークな建築やデザインを思い浮かべる人が多いだろう。アムステルダムにあるMVRDVの集合住宅やロッテルダムのマルクトハル、ユトレヒトにあるレム・コールハースとOMAによるエデュカトリウムなど、#casaで紹介したものはほんの一部で、時には奇抜だったり、時には非常に合理的だったりとその形は唯一無二の建築ばかりだ。

では、何故オランダではこんなにも多様でユニークな建築が建つのだろうか?

明快なコンセプトのダッチ・デザイン

マルセル・ワンダース率いるオランダのインテリアブランド「moooi(モーイ)」

モダニズムやバウハウスのデザインに大きな影響を与え、モンドリアンなどで知られるデ・スティルから始まったオランダのデザイン。それ以来独自の発展を遂げ、1990年代にダッチ・デザインと言われるアートのようでありながら非常に論理的に組み立てられたムーブメントを生み出した。

MVRDVによる海上に建つ集合住宅「シロダム」

明快なコンセプトを立ててデザインを構築するダッチ・デザインは、複雑化した社会の問題解決や商品としてのデザインとして非常に効果的である。住宅用地不足のアムステルダムにおける集合住宅群やインテリアブランド「moooi(モーイ)」などはその顕著な例だろう。これらのデザインは、コンセプチュアル・デザインとして世界中に影響を与え続けている。

多様性のある都市や国家

知っての通り今日のオランダは、移民を受け入れを実施している国家であり、多様な文化が入り組む寛容で成熟した社会を持っている。国土の1/4は海面下の低湿地帯で、13世紀以降干拓によって国土を拡張してきたオランダは、多様性を持つことで国際競争力を確保してきた。一人一人の個性を尊重すると同時に他者を敬うことが当たり前。LGBTの人たちのためにいち早く同性婚法制化されたり、安楽死についても法整備されたり、あるいは大麻が合法であったりとリベラルな価値観で社会が構成されている。また、学校教育では各学校によって全く違う校風やカリキュラム、思想を持つ。アムステルダムの街を歩けばその多様性に気づくはずだ。

アムステルダムにある集合住宅「ホエール」

そんな社会だから、個性豊かな建築ができるのは当然のことだし、オランダという国の多様性を受け止めるデザインでなければいけない。

禁欲的精神からの解放

ロッテルダムのシンボル的存在のキューブハウス

オランダはもともとプロテスタントの国で、禁欲的な精神の強い国であった。近年まで食文化が発達しなかったことも、地理的な要因の他に宗教の要因が少なからずあるのだろう。そこから、人々の欲望を元にする資本主義が発達するにつれて変わっていった。現在ではEU圏内で6位の経済規模で、世界的にも上位に入りその地位を確立している。

奇抜とも思えるデザインは、時にオランダの多様性を受け止めながら、経済的な面でも優位に働く。伝統に縛られ過ぎず、感情よりも客観的に判断できる経済的合理性などのメリットを優先できる稀な国家である、元々のプロテスタント的な合理主義が功を奏し、奇抜なアイディアが次々と実現されたに違いない。

公共デザインへの意識が高い

eye – アイ フィルム インスティテュート

オランダでは公共の建物の建築費の約5%をアートに使わなければならないルールがあり、街中や公共施設のいたるところにアートの要素がある。図書館や美術館などの家具も、ダッチ・デザインを身にまとったユニークで遊び心があるものがセレクトされている。空港や駅では、サインのグラフィックデザインもわかりやすく合理的なデザインが多い。異なる文化圏の人が集まるオランダでは、それぞれの人々に対して伝わりやすいことが重要で、アートによって共通の価値観を提供している。

レム・コールハースの存在

レム・コールハースとOMAによるエデュカトリウム

オランダの建築を語る上で「レム・コールハース」は欠かせない建築家だ。オランダのロッテルダム生まれのコールハースは、過去にジャーナリストと脚本家として活動していたユニークな経歴の持ち主。

実際の建築よりも先に「錯乱のニューヨーク」や「S,M,L,XL」などの著作物が有名になり、その建築理論が世界中に影響を及ぼす。彼の設計事務所「OMA (Office for Metropolitan Architecture)」以外にも、「AMO」という研究機関も設けた。リサーチやデータを元に論理を組み立て、ダイナミックな建築のデザインを生み出している。

また、OMAはMVRDVのヴィニー・マースとヤコブ・ファン・ライスやザハ・ハディド、F.O.Aのアレハンドロ・ザエラ・ポロなどを輩出している。特にロッテルダムを拠点するMVRDVの作品は、オランダ建築の代表的な例だろう。

今日のユニークなオランダの建築は、レム・コールハースの存在があったからと言っても過言ではない。

 

オランダという特殊な環境故に、独創的なアイディアが生まれる。こうして、世界で最もクリエイティブな国の一つ、オランダには次々ユニークな建築が作られていく。

今年2017年は、19世紀にオランダで生まれたデ・スティルの100周年の年で、オランダに注目が集まる。オランダのハーグ市立美術館では、大規模な企画展な行われている。この機会にオランダで最新建築やダッチ・デザインを体験してみては?

大前洋輔

大前洋輔

空間だけでなく色々なモノやコトのデザインをしています。

建築と美味しい食べもの、南の島々を探しによく旅に出ます。