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各階を貫くうねるチューブが特徴的。伊東豊雄が新世代のドミノを提案した「せんだいメディアテーク」

宮城県仙台市の「杜の都・仙台」を象徴する並木道である定禅寺通りに、2001年に開館した「せんだいメディアテーク」という市民に愛される建築がある。「メディアテーク」というと聞きなれない言葉だが、フランス語のmédiathèque=「メディアを収める棚」に由来する。図書館の書籍だけでなく映像や音楽などあらゆるメディアを収蔵している他、ギャラリーやスタジオ、ミニシアターなどの機能もあり、市民が積極的に利用できる公共施設だ。

磯崎新が審査委員長を務めたコンペで、伊東豊雄の案が選ばれたせんだいメディアテークは、国内外から注目を集め、世界中から非常に高い評価を得ている。フランスなどでは「伊東豊雄のメディアテークで有名な仙台」と言われるなど、建築が都市の顔となっている。

定禅寺通りの樹々を映し出すスクリーンとしてのファサード

ガラスのカーテンウォールが定禅寺通りの樹々や仙台の街並みを映し出し、スクリーンの役割を果たしている。近隣の建物の中では大きなせんだいメディアテークだが、圧迫感を感じさせない軽快な印象のファサードだ。ガラスのファサードによって、都市と建築が連続しているような見せ方も気持ちいい。

各階を貫くうねるチューブと各フロアで異なる階高

せんだいメディアテークは、柱としての構造体の役割を担う、各階を貫くうねるチューブが不規則に配置され、床・天井としてのスラブが各フロアで異なる階高を持つ。最小限の要素で、できる限り不均質な空間を作り出されている。伊東豊雄は、ミース・ファン・デル・ローエの提唱したユニヴァーサル・スペースや、ル・コルビュジエの提唱したドミノシステムによって作られた「均質空間」を超える新しい建築のあり方を提案した。

ガラスで覆われ、細い鉄柱でできていているスパイラル状にうねるチューブには、構造であると同時に階段やエレベーターなど垂直動線が組み込まれている。また、別のフロアに光だけでなく各階の様子や雰囲気を伝達する。

チューブを覗くと別のフロアの様子が伺える。

各フロアごとに異なるユニークなインテリアデザインや家具

不均質な空間を作り出したせんだいメディアテークは、一般的なオフィスビルのよう、などの階でも同じような使い方に適した均質空間とは明らかに異なる。図書館や美術館など様々な公共の機能を内包するこの建築は、フロアごとに階高だけでなくインテリアデザインや家具、照明、色彩も全く異なる。

例えば高さのある本棚が並ぶ図書館は、天井・階高も高く圧迫感を感じさせないと共に、明るすぎない照明計画が読書に最適な環境を作っている。奥にはロフトのような場所もあり、天井の高さを変化に飛んだ空間が特徴的。

ガラススクリーンの前には、チューブに沿ってカーブを描くユニークな家具が配置されている。

5,6階はギャラリースペースとなっていて、床はフローリングが施されている。

ホワイエになるガラススクリーン前の空間は、公園のような存在で、配置された家具もどこか遊具のようなデザイン。

スタジオやビデオライブラリなどが入った最上階のインテリアは、かつて伊東豊雄の事務所に在籍していた妹島和世によるデザイン。その後のSANAAの建築デザインの要素が感じられておもしろい。

市民のための広場のような存在

特に天井が高く明るい地上階は、定禅寺通りの雰囲気がそのまま続く市民のための広場のような存在。内部の雰囲気もそのままダイレクトに外部に伝わり、市民が気軽に立ち寄りやすい。

ガラスで覆われたチューブは、定禅寺通りの並木を延長させたような不定形なデザイン。そのチューブの存在が空間を柔らかい印象にしている。

 

建築のあり方として新しい提案をした「せんだいメディアテーク」は、伊東豊雄を代表する建築となった。また、それだけでなく公共施設としてコンペ時からユニークで話題になったこの建築は、開館後も来場者にとって心地の良い空間として、市民が集う身近な存在として成功した稀な例である。

せんだいメディアテーク

開館時間 : 9:00~22:00
休館日 : 第4木曜日/年末年始
URL : http://www.smt.jp
住所 : 宮城県仙台市 青葉区春日町2−1

大前洋輔

大前洋輔

空間だけでなく色々なモノやコトのデザインをしています。

建築と美味しい食べもの、南の島々を探しによく旅に出ます。