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大きさだけが住宅の価値じゃない。メルボルンの住宅問題に挑戦する家

via: smallhouseswoon.com

メルボルンにあるTHAT Houseという名の家。これはAustin Maynard Architects(AMA)という建築会社が、オーストラリアに住む人々が持つ「家」に対する概念を考え直すきっかけになればとデザインした家だ。THAT Houseは、オーストラリアの一般的な家と比べて建築面積を約半分に減らした一方、広々とした空間を感じられるようになっている。

via: designboom.com

建築家Andrew Maynardによると、オーストラリアでは大きな家を欲しがる人が多く、家のサイズと幸福や快適さとは比例関係にあると一般的に考えられているそうだ。実際、オーストラリアの家は世界で最も大きく、それが国内で大きな問題となっている。その要因として、安定した経済、上昇志向の文化、比較的平坦な地形に恵まれていたことが挙げられる。さらに、急速に人口が増加したことにより、農業用地や乾燥地域にまで家々が広がっていった。

このような都市の無秩序な拡大が大きな問題となるのは、食料、水道、電気、通信、医療、教育といったサービスやインフラが経済的にも環境的にも住民に大きな負担を強いるからである。例えば、オーストラリアの気候は寒暖差が大きく、広い家では暖房や冷房の必要性が余計に高まる。また、車の所有率が上がることで公共交通機関の維持が難しくなり、高齢者などの運転できない人たちが孤立してしまう。要するに、大きな家の増加は環境的な災難であり、コミュニティーにとって文化的かつ社会的な災難でもあるのだ。

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この建物は南北に細長い土地の中央に建っており、正面と後方に庭として自由に使えるスペースがある。このプロジェクトでは居住空間を大きく3つの細長い建物に分け、そのうちの2つは1階として隣り合い、3つめは2階としてその上に乗っかっている。そして配置を揃えて別々の空間とするのではなく、それぞれ前後にずらして配置し、3つの建物が関連性をもちながらも1つの空間を創るようにした。

典型的な2階建ての四角い建物と比べて利用可能な床面積は減ってしまうが、空間の質を高め、建物と建物の間を他の方法で使うことができる。例えば、1階にあたる建物の屋根上にテラスを作り、2階のベッドルームから建物の北側や南側へと行くことができる。また、前方の緑が植わった庭と後方のプールをつなぐように、1階の2つの建物の間を通路として使っている。

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1階の窓がない方の壁にワードローブ等の機能を持たせて、ユーカリの木材で作った内壁を施してある。移動可能な間仕切りや作業用のテーブルで、キッチン、リビングルーム、パントリー、勉強部屋などの空間を自由につなげたり切り離したりできるようになっている。

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このプロジェクトのコンセプトは、「一人だけど一緒に(being alone, together)」である。つまり、共有スペースの中に個人の空間をもつという意味だ。THAT Houseの一階はオープンであるように見えるが、家族が一緒に、もしくは個人で、あるいはその間のどんな度合いの関わりあいにも対応できるよう空間を変化させることができる。

例えば、書斎で静かに本を読みたい人、シッティングスペースでアニメを楽しみたい人、ダイニングテーブルでサッカーについて語り合いたい人たちといった異なるニーズが並存できる。音が干渉しあうようなオープンプランではなく、かといって閉じた空間をいくつも並べてそれぞれを切り離すこともなく、家族がスペースを共有できる。居住者の気分、その日の気候、時間、使い方といったさまざまなシーンに対応できれば、たくさんの部屋を持つ必要はない。

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THAT Houseは開放的なデザインゆえ、さまざまなプライバシーへのニーズを満たすことが重要だった。いくら大きな窓があって開放的な家でも、常にブラインドで閉ざされていては本末転倒だが、これは下向きのブラインドでは閉めるか開けるかの二者択一だから。

そこで、居住者がプライバシーの度合いをコントロールできるよう、上向きのブラインドを取り付けた。下向きのブラインドは完全に閉めきっていない限り、プライバシーが守られることはない。これに対し上向きのブラインドは、家の中への視線をカットしながらも、家の中からは庭や街路が見える。これにより、プライバシーをコントロールでき、家の中に採り入れる光をもコントロールできるのだ。

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他にも、屋根を白くすることで、熱吸収や内部への熱伝導を大幅に減らした。高性能の断熱材を採用し、さらに影を活用することで、暖房や冷房の効率を高めている。大きな水槽を後ろの庭に埋めて屋根に降った雨を集め、トイレに流す水や庭にまく水として利用できる。

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THAT Houseは小さな家ではなく、オーストラリアの住宅問題に対する解決策でもなければ、新しい家の形を提案するものでもない。しかし、このデザインの背景には問題への挑戦と抵抗が見え隠れし、空間、機能、質に関して妥協のない家である。

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