日本的な住宅・建築とは何か?モダニズムや現代の建築に見る「日本的デザイン」

日本的な住宅や建築と言うと何を思い浮かべるだろうか?

日本人の多くが切妻屋根だったり、木造建築であったり、障子や畳と言うことを挙げるだろう。

確かに特徴的ではあるが、それは記号化されたデザイン要素に過ぎない。

海外からしばしば「日本的」であると評価される日本人、とりわけ建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した安藤忠雄やSANAAといった建築家の作品。

それらは必ずしも切妻屋根ではないし木造建築でもなく、障子や畳などは使われていないが、日本的であるのは何故だろうか?

1.内部と外部をつなげる

SANAAの21世紀美術館

外部と内部とを明確に分け、コントロールしようとする西洋の建築に対して、古来から日本の建築は外部に対して開いて来た。

縁側や軒先といった空間はそうした外部と内部のバッファー空間として発生し、互いを緩やかに繋げている。

SANAAの21世紀美術館では円になった外形の周囲の空間はガラスによってランドスケープと一帯になり、限定的な機能の空間ではなく縁側や軒先といった非目的な空間になっている。

安藤忠雄設計の水の教会

21世紀美術館は外部と視覚的につなげるが、安藤忠雄設計の水の教会は巨大な開口部が開きダイナミックに外部の池とつながることで森の匂いや雰囲気も感じられ、自然と一体になったように思わせてくれる。

茶室や桂離宮など日本の伝統的な空間では昔からそういった効果を計画しデザインされていて、池に映る月や周囲の景色を取り入れるいわゆる「借景」など現代の建築でも取り入れられる手法が見受けられる。

2.機能と空間、家具が入れ替え可能

ル・コルビュジエのサヴォア邸

古くからある日本家屋は床と柱、屋根という単純明快な構成で襖など可動間仕切りで空間を区切り、布団や行灯など持ち運んだり収納したりする家具を使っていた。

ル・コルビュジエの住宅もドミノシステム上で自由に空間を作ることができることと可動間仕切りで空間を瞬時に変えられることを提案していた。

異なる大きさの四角い箱と丸い外形が特徴の21世紀美術館

現代で見るとSANAAの21世紀美術館は開き、限定されがちな美術館の観客の動線を自由にしつつ、展示室を異なるおおきさいの箱とすることで個性を出しながらメイン+サブのような主従関係を作っていない。

そのため、建築に縛られず企画展やイベントを開催することができる。

3.抽象的なデザイン

ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナ・パビリオン

ミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸は日本家屋の構成にも合致する部分が多いし、西洋的な束縛から逃れようとするモダニズムの姿は日本には既存にあったようにも感じられる。

写真のバルセロナ・パビリオンは素材に石を使っているが抽象的で無装飾、単純明快な空間が、日本の家屋も可動間仕切りや家具を取り除くと非常に似たような空間が現れる。

また日光東照宮などの特殊な宗教建築を除けば、日本の建築は機能や構造に沿って合理的に作られていて、装飾的な部分が極めて少ない。

階級社会であると同時に石やレンガなど重く、一度作ってしまうとそう簡単には変更できないモダニズム前の西洋の建築に対し、日本は木で作られた建築が多く、比較的に空間を変更しやすいこともあるだろう。

 

確かに畳や障子は落ち着くし、切妻屋根を見るとノスタルジックに感じてしまうが、日本がもともと持っていた建築の良さはそれだけではない。

一般には記号化されたデザインばかりもてはやされているが、日本の建築や多くの建築家はこう言った空間性を持ち合わせて昇華させている。

日本的な空間として名高い桂離宮はブルーノ・タウトやヴァルター・グロピウスと言ったモダニズムの巨匠も高く評価していた。

世界が注目する本当の日本の建築の良さを楽しみたい。