光と色彩が織りなす美しい空間、ルイス・バラガンの最高傑作「ヒラルディ邸」

水面や光を大胆に取り入れ、壁面に明るい色を使った住宅や庭園を多く設計したことで知られるメキシコを代表する建築家の一人「ルイス・バラガン」。

その、ルイス・バラガン邸と仕事場を訪れた後は、そこから徒歩15分くらいの距離にあるルイス・バラガン後期の名作「ヒラルディ邸」を訪れた。

「ヒラルディ邸」はルイス・バラガン最後の作品となり最高傑作と言われた住宅建築。

「casa cube」のような四角いモダンな形の「ヒラルディ邸」

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バラガン邸同様に閑静な住宅街のなかにある「ヒラルディ邸」は、バラガンらしくピンク・白・ブルーが目を引く四角いモダンなカタチの外観をしている。植栽がサボテンという、いかにもメキシコといった感じがいい。

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中に入り奥に進むとエントランスホールがあり、トップライトからの光で明るい。手すりなど余計なものがないためスッキリしてみえるため古い建物であってもスタイリッシュにみえる。

密集した住宅街にあるため、外部に対して開いた開口はなくトップライトや中庭に対して開いた窓で採光している。トップライトの光で明るいエントランスホール…そう「casa cube」の天窓のようだ。

バラガンの光と色彩が、幻想的な空間を浮かび上がらせる。

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ここからがヒラルディ邸のハイライト。エントランスホールからプールのあるダイニングスペースに続く廊下は、黄色い光で美しく照らされている。照明を設置せずに黄色いガラスで自然光を取りれた、天才的な演出。オブジェのような鏡のボールは光を拡散させるためにあるのだそう。

「こんな建築があっていいのか!」と思う程美しい廊下を通り過ぎてダイニングに。

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室内にプールがあることが、そもそもスゴイけれど、赤い柱と青い壁を照らす、トップライト(ハイサイドライト)の光の道筋がさらに色彩を美しく引き立たせる。

少し凹凸感のある塗装は光の当たり具合でまるで油性画のような壁に飾ったアート作品のようだった。こんな建築見たことない!と言った驚きの場所で、今でこそ様々なモダニズム建築があるが当時は相当な衝撃だったのだろう。

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ビビットな色彩を使いながら、そのコントラストによって静寂な中に温かみをもたせた空間。暖色と寒色が同居する、ルイス・バラガンの色の世界感がダイナミックに伝わってきた。

家具も建築に合わせてバラガン自身がデザインしたものが多く、居心地の良さそうなインテリアやそこに繋がる外部空間の階段を昇ると少し生活感がある部屋がある。また、室内プールのある空間と中庭が緩やかに繋がっていてそこもまた居心地が良さそうだった。

 

都市型の住宅でありながら中庭に向かって大きな窓が開いているため、明るく開放的に感じる「ヒラルディ邸」。光と色彩をふんだんに生かしたその幻想的で美しい空間は、ルイス・バラガンの最高傑作の名にふさわしい建築だった。